海巡署洋巡総局 第11海巡特勤隊 (台湾版海上SWAT)
The 11th Maritime Special Task Unit of Maritime Patrol Directorate General-Coast Guard Administration(Taiwan)
取材:Combat King Magazine
写真/文:乙夜
協力:海巡署洋巡総局 第11海巡特勤隊
掲載:SATマガジン 2016年5月号
台湾の海巡署洋巡総局に属する第11海巡特勤隊。この部隊は新北市の淡水に駐留し、台湾北部の海を護っている。1990年代から何度かの統合を繰り返して現在の形になり、アメリカで起きた9.11テロ事件をきっかけに、海上での保安を強化をするため、政府がこの部隊の編成を決定した。
第11海巡特勤隊は、1名の隊長と15名の隊員で構成。(2016年2月時点) 任務としては、海上での重大案件、テロ等の対応、海難事故での救護活動等。そのために、射撃や潜水、メディックなどの訓練を行う。
今回の訓練や装備等は、台湾のミリタリーマガジンCombat King Magazine(戰鬥王)とSATマガジンが特別に取材を許可された。日本語を話せる隊員が常にガイドにつき、どの隊員も親切に案内してくれた。
訓練展示
松山飛行場所属 内政部空勤總隊。アエロスパシアル社(現エアバス・ヘリコプターズ社)製 AS-365ヘリコプターNA-101だ。この取材に入った2社(CKM/SAT)のためだけに、ヘリコプターを飛ばしてくれた。
駆け付けたNA-101が船上でホバリングする間にリペリングで降下する隊員たち。降下後は速やかに周辺警戒、突入へと備える。
(左)訓練に参加する巡防救難艦CG127「新北」。海岸警備隊(沿岸警備隊)きっての精鋭部隊「海巡特勤隊」が乗船する。※巡防救難艦とは100t以上の巡視船を指す。「新北」は台湾国際造船製2,000t級。
(右)新北に搭載されている、ボフォース 40mm機関砲(L/70)。海上保安庁の「あそ」型巡視船、「ひだ」型巡視船の主兵装にも採用されている。
訓練に参加した35t級巡視船PP-3572。最大速度は30ノット。
巡視船には隊員が突入を待機している。姿勢を低くしバンカー等を使用して被弾を防ぐ。撮影のためにゆっくりと近づいたが、本来はもっと素早く船をつけて乗船を行う。
後方から警戒する隊員。M4カービンは特勤隊員の制式プライマリウェポンだ。このM4のフロントは短く、10.5インチ程に見える。狭い船内でも取り回しやすくするためだろう。R.I.Sにはライトやレーザー等を搭載。船内は明るいとは限らない。暗い場所を検索するのにも必要な装備だ。
隊員を乗せたPP-3572が、検索する船(CG127)の横につき、速やかに乗船する。
船は強度を保つために扉が小さく、隠密行動をしているときは特に、素早く通り抜けることが難しい。限られた通路で隊員が直線状に並ぶことも多くなるので、 素早く確実に検索している。
特に難しい、上下方向に警戒範囲が広くなる階段のクリアリングも慎重に行われていた。
操舵室の手前で突入のタイミングを計る。
操舵室の奥に、人質に銃を向けて立てこもる仮設敵に対し、フラッシュバンを使って一気に突入、制圧した。
負傷した立てこもり犯に対し、EMT(Emergency Medical Technician)の資格を持つ隊員が、すぐさま応急処置をして搬送する。
負傷者の移送。ホイストで吊り提げた籠に負傷者を乗せ、回収する。下で撮影していた私はダウンウォッシュに吹き飛ばされそうだが、隊員たちはものともせず素早く作業を行う。これにて状況終了だ。
装備品展示
弾抜け安全点検を行った後、使用した銃器を展示していただいた。
M4のセレクターは、安全・単発のほか、連発ではなくバーストになっていた。
魚骨護木(レイルハンドガード)仕様のHK MP5A5サブマシンガン。
T77 9mmサブマシンガン。UZIやM10イングラムなどを基に開発された、台湾製のサブマシンガンだ。主に特殊部隊で使われており、この部隊でも使われていたが、MP5にその座を譲りつつあるとのこと。
イタリアBenelli社 SuperNova/超級新星 ポンプ式散弾銃。ピストルグリップで全長が短く、船上でのCQBを想定している。
他、Benelli M4 Super90/M1014半自動散弾銃も使用。
米国S&W社製9mm口径 M5904。特勤隊員の制式サイドアームだ。
EMTの隊員のバックパックも見せていただいた。
骨折した際に固定するスプリントや、血中酸素飽和度を測定するパルスオキシメーター、血糖値を測定する装置、体格に応じた気道確保デバイスなどが用意されている。
海巡特勤隊 隊員
日頃の訓練の成果を惜しみなく見せてくれた隊員の皆さんに、敬意と感謝を申し上げたい。
艦長の徐國鈞(Hsu Kuo-Jing)さん。親切に招いてくださった。
台湾のミリタリーアイドル安妮(Anny)と乙夜が取材を行った。装備をお借りして、隊員の皆さんとご一緒させて頂いた。
過酷な環境の中、多くの海難事故等から人命を救い、任務に従事する海巡特勤隊。今日も彼らは、台湾の海を護っている。